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皆さんこんにちは!
金色、更新担当の中西です。
さて今回は
~こだわり~
目次
水炊きは、塩と柑橘、時に自家製ポン酢——調味は極めて最小限。
だからこそ主役の“鶏”が持つ 香り・コク・余韻 が、そのまま椀の中に現れます。私たちの仕事は、味を“足す”のではなく、潜んでいる旨みを邪魔しないこと。
品種と月齢
若鶏の柔らかさと、*親鶏(ひね)*の深いコク。それぞれの長所を料理で使い分けます。
例)出汁は親鶏ガラで骨太に、身は若鶏でしっとり。鍋の中で役割分担させる設計です。
餌と環境
脂の質=後味に直結。穀物主体で香りが澄むもの、ハーブ飼料で脂が軽くなるものなど、飼料設計が“後味”を決めると考えています。
締め方と冷却
放血の丁寧さは雑味、急速冷却はドリップの少なさに比例。解体〜冷却の管理がスープ濁りのカギになります。
枝肉の休ませ
解体直後は筋が張るため、0〜2℃で一晩。水分と旨みを内部に戻し、繊維のギスギスを取ります。
部位ごとの下ごしらえ
胸は低温火入れ用に整形、モモは繊維に沿って余剰筋を処理。骨はあらい湯で血と脂を抜き、香りを澄ませる——ここを怠るとスープが重くなります。
白濁(パイタン):骨と皮のコラーゲン・脂・可溶性たんぱくを対流で乳化。力強い旨みと粘度で、口当たりに“厚み”を。
清湯(チンタン):弱火で香りを逃さず引き出す。余分な脂・灰汁をこまめに掃除して、雑味のない透明感を追求。
→ 当店は 清湯でスタート→途中で白濁を合わせる“二段仕立て”。前半は滋味、後半は力強さ。鍋の中で味が“育つ”設計です。
ガラ:背ガラで骨格の出汁、モミジでゼラチンの“のり”、手羽元で香りの芯。
身:モモ=ジューシー、胸=品の良い甘み、ササミ=繊維のほどけ。
つくね:ミンチに刻み軟骨と皮目の脂をブレンド。スープの中で旨みを“放出する部位”として機能させます。
内臓:新鮮な肝・ハツを“ごく短時間”泳がせ、香りを移してから別皿へ。香りはスープへ、身は刺さず最後に。
塩:立ち上がりは鉱塩の角で輪郭を作り、仕上げは海塩の甘みで丸める。塩は味を“足す”のではなく、鶏の甘みを前に出すスイッチ。
水:硬度は旨みの抽出速度に影響。中軟水を基準に、季節でスープの滞空感を微調整します。
コールドチェーン:受け取り→分割→仕込みまで10℃以下の冷蔵導線を徹底。
交差汚染ゼロ:生と加熱済みの動線・器具・保管を完全分離。色分けまな板・包丁は厨房の“信号機”。
記録:温度ログ、ロット、調理工程を日々記録。美味しさは“再現できること”で担保されます。
夏:脂を軽く、清湯比率を高めて“するり”と。柑橘を強めに。
冬:皮やモミジを厚めに配分、粘度と保温性を優先。薬味は生姜ベースで体を温める。
新物の時期:若鶏主体で軽快に、親鶏ガラは控えめにして香りを前へ。
前日夕方:ガラ下処理→一番出汁(清湯)抽出→冷却
当日朝:白濁スープ炊き上げ→ブレンド比率決定→塩水調整
営業前:部位分け・つくね練り・薬味仕込み
営業中:鍋は清湯で提供開始→食べ進めながら白濁を追い足し→〆雑炊でコラーゲンを封じる
ガラを熱湯で短時間くぐらせて血と脂を落とす。
最初は弱火で清湯、途中から強めに対流させて白濁を少しだけ。
塩は最後に。味が“整った瞬間”で止めるのがプロの勘。
水炊きは、鶏の生い立ち、処理、熟成、部位設計、火の入れ方、塩と水——無数の小さな意思決定の積み重ねです。
“派手さ”はないけれど、椀から立つ湯気に鼻を近づけた瞬間、鶏の輪郭がくっきりと立ち上がる。
その一口のために、今日も鶏に正直であり続けます。