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日別アーカイブ: 2025年9月22日

第17回水炊き雑学講座

皆さんこんにちは!

金色、更新担当の中西です。

 

 

さて今回は

~つくねの黄金比~

 

なぜ「皮」と「軟骨」を入れるのか?

  • 皮(脂):保水・コク・口溶けを付与。脂が少ない胸挽きの“潤滑油”。

  • 軟骨(食感):噛み始めの小気味よいコリッと感→咀嚼回数が増え、旨みの滞空時間が伸びる。

  • 胸挽き(ベース):臭みが少なく、澄んだ出汁を壊さない。タンパク質の“骨格”。


用途別・黄金比(%)

(配合は総肉量に対する重量%。例:合計1,000gなら「85/10/5=胸850g・皮100g・軟骨50g」)

用途 胸挽き 軟骨 コメント
水炊き(澄んだ旨み重視) 85 10 5 出汁を濁らせず、ほどよいコクと“コリ”。
鍋でも主役(コク厚め) 80 15 5 白濁寄りの鍋や味濃い薬味向き。
焼き(つくね串) 70 20 10 高温乾燥に耐えるジューシー設計。
スープ団子(超あっさり) 90 5 5 軽やか、朝食や〆椀向き。

目安:皮10〜15%、軟骨5%前後が“水炊き”の安全地帯。皮が多すぎると浮き脂が増え、軟骨が多すぎると一体感を損ねます。


ベースレシピ(参考用)

  • 胸挽き 850g

  • 鶏皮 100g(下茹で→氷水→水気を拭き、5mm角)

  • ヤゲン軟骨 50g(2〜3mm微塵。尖りは取り除く)

調味・結着

  • 1.3%=13g(最初に入れて**2〜3分“塩すり”**して粘りを出す)

  • おろし生姜 10g、長ねぎ微塵 50g

  • 卵白 1個分(約30g)※臭みなく弾力アップ

  • 片栗粉 2%=20g(保形性/鍋にパン粉は入れない)

  • 氷水 or 出汁 8〜10%=80〜100ml(温度を上げず保水)

  • 好みで:薄口醤油 5〜8ml酒 10ml(香りの下支え)

ポイント:粉→液体の順だとダマになりにくい。常に5℃以下で仕込み、ボウルは氷当て。


工程

  1. 皮と軟骨の下処理
    皮はサッと下茹でして脂と臭みを落とす/軟骨は細かくして角を取る。

  2. 塩すり(タンパク抽出)
    胸挽き+塩を先に混ぜ、粘り(糊化感)が出るまで混ぜる。

  3. 結着・水分・具材投入
    卵白→片栗粉→氷水→生姜・葱→皮・軟骨の順に低温で均一化

  4. 火入れ
    85〜90℃の出汁で“湯ポチャ”。沸騰はさせない(脂が分離・硬化の原因)。中心温度75℃1分で安全域。


食感をデザインする微調整

  • もっとジューシーに:皮+2〜3%、氷水+2%(ただし出汁が濁りやすくなる)

  • プリッと弾力:塩を1.4〜1.5%に上げ、卵白+10g、練り時間+30秒

  • コリ感強化:軟骨+2%(2mm未満の刻み厳守)

  • 軽やかに:皮▲3%、氷水+2%、片栗▲0.5%


失敗診断

  • パサつく → 皮+2% or 氷水+2%、火入れ温度を**85〜90℃**に下げる

  • ボソつく → 塩すり不足。塩を最初に入れて粘りが出るまで混ぜ直す

  • 崩れる → 片栗+0.5〜1%、卵白+10g、成形後5分休ませる

  • 脂が浮き過ぎ → 皮▲3%、下茹で時間+30秒、沸騰禁止

  • 軟骨が固い/痛い → 刻み粗い。2〜3mm厳守、尖り廃棄


100g試作でABテスト

1袋100g×4パターン(皮8/10/12/15%)を作り、85℃で同条件3分火入れ。

  • 重量減少率(ドリップ)

  • 官能(ジューシー・コリ感・一体感を5段階)

  • 出汁の濁り指数(主観でOK)
    → スタッフ3名の中央値で次回配合を決定。**“自店の黄金比”**はここから生まれます。


安全・衛生の基本

  • 仕込み温度10℃以下・速やかに成形/保管は4℃以下、当日使い切り。

  • 垂直交差汚染防止(生用具と加熱済用具の色分け)。

  • 中心温度75℃1分確認。鍋で長置きしない。


提供設計:鍋の味が“育つ”ように

1巡目は小さめ(15g)で軽く、2巡目はやや大きめ(25g)でコクを増やす。
終盤に数個追加→雑炊のコク種として機能させると、〆が一段豊かに。


数%の設計で、世界が変わる

  • 水炊きの黄金比=胸85|皮10|軟骨5%(塩1.3%・水分8〜10%)。

  • 塩すり→低温管理→85〜90℃火入れが三種の神器。

  • 微調整は2〜3%幅で一要素ずつ。ABテストで“自店の正解”を数値化しましょう。